文書作成日:2025/07/05
結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度と改正

結婚・子育て資金を一括で贈与した場合の贈与税の非課税制度は、いつまで適用できますか?

Q
今月のご相談

 結婚や子育ての支出に充てるための資金を一括で贈与した場合に、贈与税が非課税となる制度があると聞いています。
 今年(2025年)の4月以降は適用できないと聞きましたが、実際はどうなのでしょうか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 改正前は2025年3月31日が適用期限でしたが、令和7年度税制改正により適用期限が2年延長され、2027年3月31日が改正後における適用期限となりました。

A-2
詳細解説
1.結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度とは

 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度とは、結婚や子育て資金に充てるために父母あるいは祖父母から一定の方法で資金の贈与を受けた場合に、1,000万円を限度(結婚費用は300万円が上限)として贈与税がかからない制度です。

 主な特徴は、以下のとおりです。

@ 金融機関等との一定の契約に基づく贈与であること
(具体的には、結婚・子育て資金口座の開設等を行った上で、結婚・子育て資金非課税申告書をその口座の開設等を行った金融機関等の営業所等を経由して、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出等するなど所定の手続が必要となります)
A上記@の契約締結日において、受贈者の年齢が18歳(2022年3月31日以前は20歳)以上50歳未満であること
B非課税として認められるには、支払いに充てた領収書等を金融機関等に提出する必要があること
C非課税として認められる支払使途は、挙式費用、家賃、転居費用、妊娠、出産、育児に関する一定のものに限られていること
D年齢が50歳に達したなど、契約期間が終了した時点で残額がある場合には、その残額は贈与税の対象となること
(2023年4月1日以後に取得する信託受益権等について適用されるときは、特例税率の適用要件に該当しても一般税率を適用して贈与税を計算します)
E契約期間中に贈与者が死亡した場合で残額がある場合には、相続税の対象となること
2.令和7年度税制改正

 上記1の制度(以下、本制度)は、令和7年度税制改正において適用期限が2年延長され、適用期限は2027年3月31日となりました。

 財務省の資料によれば、2024年3月末時点での、本制度を適用するための信託の利用実績は、契約件数が7,787件、信託財産設定額は約244億円、とありました。契約件数については、前年よりも200件弱の増加となっています。

 他方、同じような制度に「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」がありますが、こちらは契約件数が268,182件、信託財産設定額は約2兆414億円です。契約件数は前年よりも6,000件程度増えています。

 このように本制度は、利用実績が少ないことから制度の存続について危ぶまれていましたが、現在「こども未来戦略」の集中取組期間(2026年度まで)の最中であることが勘案され、令和7年度税制改正において、適用期限が延長されました。
 ただし、与党の「令和7年度税制改正大綱」には、「令和5年度税制改正大綱で「制度の廃止も含め、改めて検討する」とされた後も、利用件数が低迷する等の状況にあり、関係省庁において、子育てを巡る給付と負担のあり方や真に必要な対応策について改めて検討すべきである」と明記されていることから、その後については注視すべきかと思われます。

 なお、家族などの扶養関係にある人同士で、生活に必要なお金や物をその都度渡した場合、それが普通に必要な範囲であれば、贈与税はかかりません。この点も考慮に入れながら、この制度の利用を検討されるとよいでしょう。

 贈与税について詳しくお知りになりたい方は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

<参考>
国税庁HP「No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」「No.4405 贈与税がかからない場合
財務省HP「贈与税に関する資料
自由民主党HP「令和7年度税制改正大綱(PDF)

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